宗報
「子ども・若者ご縁づくり」4年を振り返って
宗報(2018年3月号) シリーズ「子ども・若者ご縁づくり」第15回
「子ども・若者ご縁づくり」
4年を振り返って
「子ども・若者ご縁づくり推進室」が設置され4年になります。同時に推進室にマネージャーがおかれ「ご縁づくり活動推進会議」を組織し、ご縁づくりの方向性を協議しつつ運動を推進してきました。今回は今までの2期4年を振り返ります。
◇はじめに
ご縁づくりの現場は、この活動に取り組むお一人おひとりが行動を起こされるところにあります。宗派(推進室)は子ども・若者層へのご縁づくりの旗振り役であって、子ども・若者へのご縁づくり活動の現場は皆さん方お一人おひとりのところにあります。確かに推進室の事業として直接子ども・若者へのご縁づくり活動に携わることがありますが、それはご縁づくりにおける新しいカタチの伝道活動の提案として行っているものです。推進室の役割をあらためて確認いたします。
- 一つでも多くご縁づくりの活動に取り組む「現場を増やす」こと。
- ご縁づくりにあたって、多様化している思春期・若者の現状を学ぶと共に、彼らに当事者の立場に立って寄り添っていきたいとの宗派の方向を打ち出していくこと。
次の表は「ご縁づくり」の推進(現場を増やす)にあたって、誰に向けて、何を?どのように行うのか?を考える時のめやすとしているものです。すべての寺院活動に通じることですが特に教化活動は「できるか」「できない」かの前に、「する」もしくは「したい」の意識が大前提となるものです。
誰に(4つタイプ) | 何を?どのように?(4つのプログラム) | |
①できる×(から)する | → | 先行事例や教材などの情報共有など |
②できない×(けど)したい | → | できない要因の解決策や事例などを提案して支援 |
③できない×(から)しない | → | できない要因の解決策と取り組みへのお願い |
④できる×(けど)しない | → | 取り組みへの奮起をお願い |
⑤している×今さら | → | 協力を願う |
推進室(「ご縁づくり」活動推進会議及び子ども・若者ご縁づくり推進委員会)の仕事は
- 宗派内全体に「する」「したい」という動きを創り出す(推進)ための事業を展開することであり、「する」にあたって「できる」よう支援する事業を行うこと。
- 「しない」寺院を可能な限り少なくしていくという重要で困難な仕事。
「する」ためには理念が必須です。それについてはご縁づくり基本方針でお示しし、教区連絡協議会などへマネージャーが出向し、お伝えしております。
推進室の事業計画・活動方針にあげているものは、すべて①~②に配当できるものです。
平成28年度と29年度は伝灯奉告法要が勤められましたので、子ども・若者関連協賛行事にも取り組みました。その概要と総括は過去の宗報(2017年10月号[シリーズ子ども・若者ご縁づくり]・18年1月号[宗門ニュース]・2月号[シリーズ子ども・若者ご縁づくり])に掲載していますのでご参照ください。
推進室発足当初、当面の目標として「伝灯奉告法要に子ども・若者1万人大結集を」と言ったことがあります。それは取り組みの中で1万人ほどの子ども・若者が京都に参集してもらえるような動きを宗派内に起こそうという意味合いでした。
結果としては「本願寺Days」や「ごえんさんエキスポ」「スクール・ナーランダ特別編」「本願寺ギャザリング」などの参加者で1万人を優に超える参集があったことを、まずはご報告いたします。これは、ひとえに各教化団体、特に少年連盟・仏教青年連盟および各教区のご協力があってのことですし、時代に即応した新しいカタチのプログラム採用とSNSやメディアを利用した新しい情報拡散方法が功を奏したものと考えています。これらのことは今後のご縁づくりにとって、何が大事で何が必要なことなのかについて、大きな方向性を見出すことができたと受け止めています。
◇これまでの概要
子ども・若者ご縁づくりの前身は、2007(平成19)年親鸞聖人750回大遠忌法要「宗門長期振興計画」(以下、「長計」とします)の柱の一つ〝次代を担う「人」の育成〟の推進項目である青少年教化活動を基に提唱した「全寺院子どものつどい~キッズサンガ~」です。これは「ご縁のある大人がすべての子どもたちと接点を持ち、ともに阿弥陀さまのご縁にあっていこうとする運動」と定義付けして取り組んでいたものでした。
全寺院において子ども層への教化活動を、ご門徒と共に寺院を挙げて取り組んでいこうと推進していましたが、キッズサンガ運動でご縁のできた子たちの成長に合わせ、ご縁を繋ぎ続ける活動の必要、つまり青年層への教化活動充実が当初より大きな課題でした。
2014(平成26)年ご門主の法統継承に合わせ、期限付きの長計での取り組みを常態化し、子ども層に加え青年層をも対象とした教化活動に注力することは、宗門の取り組むべき喫緊の課題であることを、宗務の基本方針に掲げ、それにより「子ども・若者ご縁づくり推進室」を設置し取り組み始めたものです。
その時、対象を0歳の子どもから40歳未満の若者と明確にし、教化活動のことを「ご縁をつくる」ことからとしたうえで、「子ども・若者ご縁づくり~キッズサンガをさらに~」の名称のもと、子ども層へのご縁づくりにさらに取り組みつつ、さらに若者層へのご縁づくりにも取り組んでいこうと推進しております。
◇「第10回宗勢基本調査」報告書から
2015(平成27)年3月1日に行われた「第10回宗勢基本調査」の報告書の内容から、子ども・若者ご縁づくりの現況と課題について述べていきます。(*)
教化団体
まず、子ども層と若者層に関連した教化団体の組織数と組織率について教化団体の組織率の推移によると、「土・日曜学校、子ども会」1,580(24.9%)「仏教青年会」354(5.6%)「ボーイスカウト・ガールスカウト」168(2.6%)。総合計2,102となっており、前回調査(2009年)時よりスカウトを除きいずれも数字は下がっています。
「活動は活発か」の問いに対し「土・日曜学校、子ども会」は11.4%から7.7%へと活発に活動している率が大きく下がっている現状が見えます。
同じように「仏教婦人会」「仏教壮年会」も、同様の状況です。
2007年にキッズサンガを提唱し、「初めの一歩として、大遠忌までに子どもを視野に入れた寺院活動を始めましょう」と、仏教婦人会・壮年会の方々に呼びかけた結果が、前回調査(2008年)の「活発に活動している」率が高くなった要因と考えられます。
今回調査で活動状況が低迷している結果をもたらした原因の一つに「初めの一歩を大遠忌までに」と運動展開したことを、「キッズサンガは大遠忌法要まで」と受け取られたことによると考えられます。
これは寺院活動すべてについて言えることですが、活動が一過性のものになっているということです。「継続は力なり」、これが時代が変わっても教化活動の王道であることを僧侶もご門徒も共に確認したいものです。
次に、子ども・若者への「み教え」とのご縁づくりの調査報告で、どのような取り組みがなされているのかを問うた結果「何も行っていない」が42.4%。57%あまりの寺院で、「その他子どもを主体とした行事」が18.7%、「大人中心の法要・行事への子どもの参加」が18.1%で、「2007年に宗派が取り組み始めた『キッズサンガ』は17.2%に留まっています」と報告されています。
実は上記の57%あまりの寺院でなされているものはすべてキッズサンガ「3つのかたち」の範疇に入るもので、推進室が受けている各教区からの報告でも約6割の寺院で取り組みがなされているという結果が出ており、今回の宗勢基本調査報告と相応するものです。しかし「2007年に宗派が取り組みを始めた『キッズサンガ』は17.2%に留まっています」とされているところにも「キッズサンガ」が、誤解されているという現実があります。
「全寺院子どものつどい~キッズサンガ~」から、「子ども・若者ご縁づくり~キッズサンガをさらに~」と運動名称を変更したうえで取り組んでいますが、調査報告書から、これからますます全寺院において子どもへのご縁づくりを柱とした「ご縁づくりの現場」が一つでも多くなるように推進していくことが重要であることに気付かされました。
◇教区での推進について
子ども・若者ご縁づくりの現場を全寺院に波及させるために、各教区に教区子ども・若者ご縁づくり推進委員会の設置をお願いしてまいりました。現在22教区(推進委員会22教区・キッズサンガから継続した委員会6教区・未設置4教区:2018年2月現在)で設置されています。引き続き設置を呼びかけてまいります。
教区推進委員会の主な役割は、
- 教区内寺院がご縁づくりに取り組んでもらうよう環境を整えること。また組においてもご縁づくり活動が行われるよう働きかけること。
- 教区主体の事業企画(イベントなど)を行うことで寺院のご縁づくり活動の支援をすること。
この2つにあります。
- (1)についてはスタートアップガイドなどを利用しながら「ご縁づくり研修会」を開催、あるいは教区僧侶研修会や坊守研修会、教化団体の研修会などの場を借りて地道に説得を行い続けることが大切なことだと思います。その時、教区少年連盟ならびに青年連盟と連携していくことが重要であると考えます。
- (2)については教区や組単位でのイベントなどを通して支援していく。これも推進委員会独自ではなく少年連盟・青年会連盟との協働事業とすることで教区内にご縁づくりの一体感を醸し出すことができると考えます。
上記のことが教区推進委員会の役割ですが、「誰に」対し「何を」「どのように」して「ご縁づくりの現場を増やしていく」のかを明確にしないまま動いている状況が多いようです。
最初に推進室の役割について述べましたが、教区推進委員会の役割もそれに準じたものであることを今一度確認する作業が必要だと思います。
そのためには教区マネージャーの役割についても各人今一度認識を新たにすることが必要ですし、組のサポーターの方々への研修も必須となります。
また次世代の方にも「手を合わせお念仏申す人になってもらいたい」との願いで取り組んでいるものですが、寺院子弟の育成も視野に入れることを忘れてはならないと思います。
宗派では僧侶育成プロジェクトとして研修体制の見直しが行われていますが、その場に至るまでの寺院子弟へのご縁づくりを蔑ろにしては、目指している僧侶像は実現しにくいのではないでしょうか。
これからは教区の事業の一つに「寺院子弟の集い」など、同じ境遇にあるもの同士の出会いの場を創り出すことが重要になっていくと思います。
◇おわりに(ご縁づくりの根底に求められること)
○信頼しあえる関係性の構築
教化活動は人との繋がりに依って成り立ちますから「一人一人との関係性の構築」が不可欠なことは、今までの寺院活動が証明しています。我と汝の関係性のところに教えは自ずから伝わるものだと思います。その関係性は「信頼」が成立させます。子ども・若者ご縁づくりの現場は子どもや若者との信頼関係を結ぶことでもあります。
そのことをあらためて自覚させられたのは、「思春期・若者支援部会」が企画運営したセクシャリティを切り口に「性と生と死から学ぶ思春期・若者を知るための公開シンポジウム」や「思春期支援コーディネーター養成研修会」でした。そこで学んだことは「依存することの大切さ」と「信頼される大人になる」ということでした。
この学びを通して、私たち一人ひとりが丁寧で緻密な人間関係を構築する営みを行い続けること。そして私たちはともすれば自分の価値観で子どもや若者の在り方について、「決め付け」や「押し付け」をする恐れを抱えていますが、その自らの価値観自体を問い直すことが、生きづらさを抱えている子どもや若者に向き合っていく時、求められていることであり、これはご縁づくりの根底となるものと気付かされました。
○既存の活動を編集しなおすこと
「企画事業部会(現:若者ご縁づくり部会)」が提案した「新しいカタチの伝道活動」であるスクール・ナーランダ事業で多くのことを学ぶことができました。
一つには若者にダイレクトに情報を届けることのできるSNSを駆使する手法です。二つには異分野の方々と僧侶が同じテーマで授業を行い、それを基に参加者同士がミーティング、そして講師同士のトークセッションなどという、仏教と異分野をクロスさせることで化学反応を起こすということでした。
目新しいイベントと捉えられがちなスクール・ナーランダですが、これらは私たちの教団がこれまで行っている「ご示談」や「談合」、現在では連研における「話し合い法座」などと、その本質に変わりはありません。
新しいカタチの伝道活動とは、全くなかったものを編み出すことだけではなく、今まで行っていることを根底に置きながら、「見せ方」「見え方」に時代を反映させ、「異分野と仏教とをクロスさせる」ことなどを加えることで仏教の本質を浮き立たせ、生きる智慧を仏教に学んでもらうことも可能であることが今回明らかになりました。
時代や環境の変遷があろうとも変わらない教えを、その時代や人の資質傾向を見抜きながら子ども・若者への教化活動のあり方を一人ひとりが模索したいものです。
「ご縁づくり」活動推進会議委員長
松月博宣
* 参照データ
「第10回宗勢基本調査報告書」第5章
寺院の活動1.教化団体(p74)
寺院の活動4.子ども・若者への「み教え」とのご縁づくり(p87)
教区別集計 問45(p146)
2014(平成26)年度 | ||
全アドバイザー会同 | 9月10日・11日 | 聞法会館 |
子ども・若者ご縁づくり中央連絡協議会 (1回目) |
11月4日・5日 | 伝道本部 |
浄土真宗本願寺派 教化団体・龍谷総合学園合同協議会 | 12月17日 | 聞法会館 |
2015(平成27)年度 | ||
思春期・若者を知るための公開シンポジウム(京都) |
6月3日 | 聞法会館 |
全国高校生「平和を学ぶ集い」in沖縄 | 8月4日~6日 | 沖縄県内 ネストホテル那覇 |
思春期・若者を知るための公開シンポジウム(東京) 「イマドキ思春期の悩みとモヤモヤ」「生と性と死」から見る関係性のふしぎ発見 |
9月30日 | 築地本願寺 |
子ども・若者ご縁づくり中央連絡協議会(2回目) 浄土真宗本願寺派 教化団体・龍谷総合学園合同協議会 仏教プレゼン大会 |
11月10日・11日 | 伝道本部 |
2016(平成28)年度 | ||
第1期 思春期・若者支援コーディネーター養成研修会 (第1回) |
5月9日~11日 | 聞法会館 伝道本部 |
子ども・若者ご縁づくり教区マネージャー代表者 事務担当者研修会(中央連絡協議会 3回目) |
6月1日・2日 | 伝道本部 |
思春期・若者を知るための公開シンポジウム(北海道教区主催) 「イマドキ思春期の悩みとモヤモヤ」「生と性と死」から見る関係性のふしぎ発見 |
6月6日 | 札幌別院 |
思春期・若者を知るための公開シンポジウム(東海教区主催) 「イマドキ思春期の悩みとモヤモヤ」「生と性と死」から見る関係性のふしぎ発見 |
6月20日 | 名古屋別院 |
第1期 思春期・若者支援コーディネーター養成研修会 (第2回) |
7月6日・7日 | 聞法会館 伝道本部 |
全国高校生「平和を学ぶ集い」in沖縄 メンバー再集合!! 「第25代専如門主伝灯奉告法要」子ども・若者関連イベント企画作成&プレゼン大会 |
8月6日~8日 | 聞法会館 |
思春期・若者を知るための公開シンポジウム(福岡教区主催) 「イマドキ思春期の悩みとモヤモヤ」「生と性と死」から見る関係性のふしぎ発見 |
10月17日 | 福岡教堂 |
現代版寺子屋 スクール・ナーランダvol.1 京都 | 2017(平成29)年 2月4日・5日 |
本願寺・伝道院 |
第1期 思春期・若者支援コーディネーター養成研修会(第3回) | 2月8日・9日 | 伝道本部 |
現代版寺子屋 スクール・ナーランダvol.2 富山 | 3月4日・5日 | 善興寺(高岡教区) |
2017(平成29)年度 | ||
カルト対策についての講演会 (大阪教区子ども・若者ご縁づくりサポーター養成研修会:大阪教区共催) |
6月30日 | 津村別院 |
第25代 専如門主 伝灯奉告法要記念・協賛行事 児童念仏奉仕団・子どものつどい ~「本願寺DAYS」~ |
(第1回) 7月25日・26日 |
本願寺境内 聞法会館 |
(第2回) 7月27日・28日 |
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(第3回) 8月1日・2日 |
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(第4回) 8月3日・4日 |
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2017(平成29)年度 子ども・若者ご縁づくり(キッズサンガ) 中央連絡協議会スキルアップ研修会(4回目) |
9月6日~8日 | 伝道本部 |
第25代 専如門主 伝灯奉告法要記念・協賛行事 「スクール・ナーランダ特別編」 |
12月9日 | 阿弥陀堂 |
「本願寺ギャザリング」 | 12月10日 | 阿弥陀堂 |
「ごえんさんエキスポ」 | 12月9日・10日 | 本願寺白洲 |
現代版寺子屋 スクール・ナーランダvol.3 東京 | 2018(平成30)年 3月3日・4日 |
築地本願寺 |