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宗報

平成30年からの「子ども・若者ご縁づくり」推進の方向性について

宗報(2018年4月号) シリーズ「子ども・若者ご縁づくり」第16回

 

平成30年度からの
「子ども・若者ご縁づくり」推進の
方向性について

 
◇はじめに(「子ども・若者ご縁づくり」の願い)

 親鸞聖人ご遷化より750年を超える年月が経過しました。その間、「人」から「人」へ、絶え間なく「み教え」が伝えられたおかげで、いま、私のところへその「み教え」は届いています。「ご縁」をいただくばかりではなく、私から「つなぐ」ことができればとの思いが起こります。今を生きる子ども・若者たちに、阿弥陀様の願いを伝えることも私たちの役割ではないでしょうか。
 宗門が推進しています「子ども・若者ご縁づくり」とは、「み教え」とのご縁をいただいた者が「ご縁」のはじまりのお手伝いをしようというものです。また、その「ご縁」を「つなぎ」「深める」ことに取り組んでいこうとするものです。
 そして、その取り組みの先に一人でも多くの子どもや若者に「お寺を居場所」としていただくことを目指しています。それは、単に「お寺を遊び場に」ということではなく、「すべての子どもや若者たちが、阿弥陀様の願いの中に、心をひらき安らいでいけるお寺になろう」という願いが込められています。
 また、子どもや若者たちの寄り添う「ご縁づくり」の取り組みを全国のお寺で僧侶・門信徒が、地域社会との交流の中で実施をしていくことによって、子どもから大人、地域が関わり合う「お寺本来の姿」があらわれてくるのだと思います。
 第25代専如門主伝灯奉告法要が円成され、「子ども・若者ご縁づくり推進室」が設置されて5年目を迎える今、親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要の御修行を機縁として、さらに子ども・若者層へのご縁づくり推進の歩みを着実に進めていくため、支援体制の現状と課題を正しく認識し、平成30年度からの「子ども・若者ご縁づくり」推進の方向性を皆様と共有したいと思います。
 

◇今までの推進体制構築の経緯

 平成17年8月よりスタートした「宗門長期振興計画」の重点項目「次代を担う『人』の育成」に基づき計画・実施された「キッズサンガ」の成果を踏まえ、2014(平成26)年度ご門主の法統継承を機に「子ども・若者ご縁づくり推進室」を設置しました。また同時に、推進室がご縁づくり活動の推進に必要な事項を協議するために「ご縁づくり活動推進会議」を設置し、宗門が取り組む「次代を担う人の育成」である「青少年教化」をより総合的・体系的に推進し、全宗門的な取り組みとして展開を図るため、「子ども・若者ご縁づくり基本方針」を定めました。
 その方針の中で、あらためて「青少年教化」は子どもや若者世代および寺院、並びに宗門の将来的展望を切り開くための重要な対策であることを確認し、引き続き重点的かつ継続的に活動を推進発展させていくために、取り組むべき重要課題として「(1)阿弥陀様とのご縁をいただいた子どもたちが、青年になっても引き続きご縁を深めてもらえるような具体策の取り組み」と「(2)今まで全くご縁のなかった若者世代を対象とした具体的なご縁づくりの取り組み」の2項目を設定しました。
 また、近年では社会環境の変化によりライフスタイルや価値観の多様性が進み、少年や青年の置かれている状況が急速に複雑化しており、これからの子どもや若者世代を取り巻く環境に即応した青少年教化を推進するためには、対象者をより具体的にイメージした教化方針と体制を構築することが急務であると考えました。そこには宗門に所属する青少年世代の教化だけではなく、あらゆる子ども・若者世代をも視野に入れた教化活動であることを、より鮮明にする意味が込められています。
 そこで、あらためて「青少年」を「子ども・若者」、「教化」はまず「ご縁づくり」からと「青少年教化」の意味を捉え直し、宗門の未来を担う「次世代の育成」である青少年教化活動を「子ども・若者ご縁づくり」と総称することを提唱いたしました。
 その基本方針に基づき、地域性(各教区の特質)を考慮にいれながら全寺院での子ども・若者を対象としたご縁づくりの企画推進及びその活動支援を展開するために、平成28年度に「子ども・若者ご縁づくり推進委員会」を宗務所に設置し、各教区に「教区子ども・若者ご縁づくり推進委員会」設置のお願いをさせていただきました。
 

◇現状の課題と解決にむけて

 総括書(『宗報』2018年3月号)にもありますように、「第10回宗勢基本調査報告書」や推進室への実施報告書等によると、現在「教区子ども・若者ご縁づくり推進委員会」は22教区(推進委員会22教区・キッズサンガから継続した委員会6教区・未設置4教区:2018年4月現在)に設置され、「ご縁づくり」の取り組み寺院数は4千700カ寺を超え(2017年度)、「宗門がこれまでに示してきた基本的な方針のなかで特に重要だと思うもの」という質問に対し「子ども・若者へのご縁づくりの推進」が54.5%と最も高く、大多数の方が、次世代育成の必要性を感じておられることがわかりました。この調査結果から、今後は現場での「ご縁づくり」のサポートとなり得る事業と、より具体的な提案が求められていくと考えられます。
 しかし、それとは反対に「子ども・若者への『み教え』とのご縁をつなぐための活動」(複数回答)という質問に対して「何も行っていない」と回答された方は42.4%、それ以外の57%あまりの寺院で、「その他子どもを主体とした行事」が18.7%、「大人中心の法要・行事への子どもの参加」が18.1%、「2007年に宗派が取り組み始めた『キッズサンガ』」は17.2%と報告されています。そして、「何も行っていない」との回答が50%を超えたのは12教区ありました。これは、次世代育成の必要性は感じながらも、地方性や地域性等、色々な事情で活動を行っていない、または行えない状況である寺院が多いことがうかがえます。また、若者層(中学生・高校生・大学生・専門学生・社会人など)への働きかけが少なく、改めて「誰に」対し「何を」「どのように」して「ご縁づくりの現場を増やしていく」のかを明確にし、それぞれの活動に応じた支援をしていく必要があると考えられます。今後は「教区子ども・若者ご縁づくり推進委員会」、「教区マネージャー」の役割も今一度確認し整理する作業が必要かもしれません。
 また、『宗報』2016年11・12月合併号にも掲載されましたように若者を視野に入れた「ご縁づくり」に取り組むため、名称を「キッズサンガ」から「子ども・若者ご縁づくり」に変更したことをわかりやすく伝え得なかったことや、次々と新たな言葉が出てくる印象を与えてしまったことで現場を少々混乱させてしまったことは否めません。現在も各協議会で趣旨などを引き続きお伝えしておりますが、いまだ宗門全体の周知には至っておらず、情報の積極的な「見える化」を進め、わかりにくい名称を整理することで対応していきたいと考えています。
 その他にも、「ご縁づくり」のイメージが宗門内に限定している感があり、基本方針で提唱された「あらゆる子ども・若者世代」が対象になっておらず、この活動が宗門内で留まっていることも、各報告書から感じ取れます。


◇平成30年度「子ども・若者ご縁づくり」推進の重点項目

 子ども・若者層への「ご縁づくりの現場」は、この活動に取り組むお一人おひとりが行動を起こされる所にあります。
また、その現場を支援するために「子ども・若者ご縁づくり推進室」は、「①『ご縁づくりの現場』が一つでも多くなるような支援の推進」、「②多様化する子どもや若者世代の現状を学ぶと共に、彼らの『今』を支え、阿弥陀様との『ご縁づくり』をしていくことを目的とした、事業の企画や研究の発表」の2点を大きな柱とし、宗門のご縁づくり活動の方向性を打ち出していくことを役割としています。
 上記の役割を明確にし、前項の課題を解決するために、平成30年度より以下の5点を重点的かつ継続的に推進発展させてまいりたいと思います。

  1. 組織体制の見直しと強化
  2. 人材の発掘と成長の支援
  3. 対象を分けた「ご縁づくり」推進の強化
  4. 時代に即した広報活動の推進
  5. 各教化団体との連携

 (1)・(2)についてですが、「教区子ども・若者ご縁づくり推進委員会」の全教区設置を目指し、引き続き各教区においてご尽力をいただくようお願いをしてまいります。また、教区事情を鑑みながら組織の機能面より「ご縁づくり」を推進していく「教区子ども・若者ご縁づくり推進委員会」や、各教区へご縁づくりの浸透を図る役割をもつ「教区マネージャー」についても、今一度役割について認識を新たにし、各組のサポーターも含めた研修を開催する必要もあると思います。また「ごえんさんエキスポ」でも紹介されましたように、全国各地で気軽に仏教とふれあえるような様々な取り組みを行う活動がみられます。活動に取り組むもの同士の出会いの場を作り出すことも重要になってきていると感じています。
 (3)については、「子ども・若者ご縁づくり基本方針」に定められた「(1)阿弥陀様とのご縁をいただいた子どもたちが、青年になっても引き続きご縁を深めてもらえるような具体策の取り組み」として、現在、施策が十分ではない中高生を対象としたご縁づくりについて様々なアイデアを出し合い、準備を行うような推進体制を整えてまいります。
 (4)については、ホームぺージを含め若者世代を中心とした現代的なコミュニケーションスタイルである、LINE、Facebook、InstagramなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した情報発信やコミュニケーションづくりを行い、ダイレクトに「み教え」を届けることのできる広報機能の体制強化を整備していきたいと思います。
 (5)についてですが、2007年にキッズサンガを提唱し「初めての一歩として、大遠忌までに子どもを視野に入れた寺院活動を始めましょう」と仏教婦人会や仏教壮年会の方々に呼びかけた結果、「第9回宗勢基本調査(2008年度)」において、寺院の教化団体が活発に活動している率が向上しており、教化団体が相互に連携することにより各団体で相乗効果が期待できると思われます。各団体の連絡協議会を開催し、より強固な連携を目指し協議を進めたいと思います。
 

◇おわりに(すべての原点は「信頼関係が土台にあること」)

 子ども・若者ご縁づくり推進室は、「子ども・若者ご縁づくり」の名称のもと、日本国内はもとより世界の子ども・若者たちが、阿弥陀様のご縁に遇い、今も将来も親鸞聖人の教えに親しみ、聴聞の座に連なる「人」となり、自他ともに心豊かに生きていくことのできる社会の実現に向け、努力する歩みを進めていただくことを願い、様々な具体的施策に取り組んでまいります。
 寺院活動からわかるように、教化活動は人との繋がりに依って成り立っています。ですので「一人ひとりとの関係性の構築」が非常に重要です。そして、その関係性は「信頼」が成り立たせます。私たちはご縁づくりの現場に関わる教区・組・寺院、一人ひとりと信頼関係を結ぶことを大切にし、またご意見をいただきながら全宗門的な取り組みとして展開することを目的に設定したうえで、具体的な施策を推進していきたいと考えています。
 仏縁の多くは地域や家庭によってもたらされていましたが、現代ではおよそ宗教的な伝承が困難な状況です。また、人口減少や過疎化の進行による問題等、宗門を取り巻く環境は大きく変化しています。しかし、環境は変化しても宗門の未来を担う人材の育成が最重要課題であることは今も昔も変わりはありません。ともに、子どもや若者世代の現状を学び、彼らの「今」を支え、阿弥陀様との「ご縁づくり」を推進してまいりましょう。


子ども・若者ご縁づくり推進室長
浄土真宗本願寺派副総務
弘中貴之


PDF:第16回  平成30年からの「子ども・若者ご縁づくり」推進の方向性について

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