search button

宗報

楽しむことを前提とした、仏様とのご縁づくり

宗報(2018年9月号) シリーズ「子ども・若者ご縁づくり」第20回

 

楽しむことを前提とした、仏様とのご縁づくり

◇はじめに

 第24代即如ご門主から第25代専如ご門主への法統継承(2014年)を機に「子ども・若者ご縁づくり」の取り組みが始まり、5年目を迎えました。「子ども・若者ご縁づくり」とは、「ご縁のある大人たちが、すべての子ども・若者と接点を持ち、子ども・若者とともに、阿弥陀さまのご縁に遇い、全世代がお寺を居場所として、手を合わせ念仏申す人になってもらいたい」そんな願いが込められているといただいています。
 この取り組みは現在、全国各地・各寺院で様々な形で活動が行われていますが、実際には「どこから始めていいのかわからない」、「どのように行えばいいのかわからない」という声も、多く聞こえてきます。私も2007年度より「キッズサンガ」の取り組みが始まった当時、少年教化活動を行っていなかった私のお寺で「一体どのように始めたらいいのだろう?...」と、大変悩んだことを思い出します。
 そのような中で、試行錯誤を繰り返しながら続けてきた結果、いつの間にか私のお寺での取り組みが11年もの活動になり、それによってたくさんの人のご縁、これまでお寺では見られなかった様々な現象が生まれ始めました。
 今回は僭越ながら私のお寺での取り組み、活動についてご紹介をさせていただきながら、その活動の背景、また、子ども・若者へどのようなアプローチ・発信を行っているのか? そして、継続してきた結果、お寺にどのような現象が生まれたかなどを、お話しさせていただきます。
 これから「子ども・若者ご縁づくり」の取り組みを始めようとされる方へ、少しでもそのヒントになれば幸いです。
 

◇キャンドルナイトLIVE

 私のお寺では、毎年秋にカンボジアのチャリティー・イベント「キャンドルナイトLIVE」を開催しています。お内陣の灯りと竹蝋燭の灯りの中でライブを行い、経費をさし引いた収益は、すべてカンボジアの学校や村に直接寄付させていただくという趣旨のもとに行っています。

キャンドルナイトLIVE②.jpg

カンボジア・チャリティー「キャンドルナイトLIVE」の様子

 これまでに得た収益は、すべて現地学校の運営費・維持費として寄付され、また電気も水道も通っていなかった郊外の村に「井戸設置プロジェクト」を立ち上げて、6年間で現在22基の井戸が設置・稼働。村人の生活に大きな変化をもたらしています。
 この「キャンドルナイトLIVE」は、今年で11年目となり、毎年若者からご年配の方まで300名超もの人が集う、お寺の一大行事となりました。
 

◇若者58名で行うお寺での活動

 このイベントは、活動の趣旨に賛同するご門徒や一般の若い世代、58名で運営されています。学生から40代前半の若者層を中心に職業も様々です。建築家、インテリアデザイナー、ラジオ・パーソナリティー、写真家、美容師、アパレル、バリスタ、黄檗宗の僧侶等。国籍もカンボジアをはじめ、これまでにタイ、イタリア、ドイツ、アメリカ、キューバ等々。年齢も、職業も、国籍も超えて、みんなで「楽しむことを前提に、それをいいことにつなげる」、そして、「無理をしない程度に、自分ができる範囲で、継続した活動」を合言葉に、みんなで楽しみながら取り組んでいます。
 

◇はじまりは「キッズサンガ」

 もともと、この活動を行うきっかけは「キッズサンガ」が提唱されたことでした。当時、少年教化が十分になされていなかった私のお寺で何ができるのか? 当時「子どもとのご縁」そのもの自体がありませんでした。...それなら、「子ども」や「ご門徒」というより、まず同世代の「友人」、「知人」に対して発信してみようと、今でいう「子ども・若者ご縁づくり」から始まっていきました。

カンボジアチャリティ②.jpgチャリティーイベントと連動したカンボジアでの活動
 

◇はじめに掲げた「3つの柱」

 私はこのイベントを立ち上げるにあたり、まず「3つの柱」を掲げました。

  1. 「明確な趣旨・コンセプトを持って行う」こと。
  2. 「お寺での情報発信の見直し」(若者に特化した情報発信の仕方)。
  3. 「『任せる』ことで生まれるアート性」。

 この3つを基本の柱として、手伝ってくれる仲間の得意分野、専門知識を活かして行っていこうと考えました。
 ①「明確な趣旨・コンセプトを持って行う」とは、ただお寺で「イベントを行う」、「若者を集める」というのではなく、そこには明確な趣旨・コンセプトを持って行うということ。継続して行うには、「芯」や「核」となるものを明確に打ち出す必要があると考えました。
 そして、②に「お寺での情報発信の見直し」。これまでのお年寄り目線での情報伝達方法を、思い切って「若者目線」での伝え方に変えました。例えば、SNSやウェブサイトの活用。または、デザイン性を高めたチラシ作製などです。これによってお寺側の「本気度」や「思い」がより伝わりやすくなりました。そしてこれまでありえなかった、カフェや、雑貨店、大手レコードショップなどにも「お寺の案内」を置かせてもらえるようになったのです。
 そして最後は、③「『任せる』ことで生まれるアート性」。これまでお寺の住職がチラシのデザインから会場演出、司会進行などすべてを担っていました。これを、得意分野、専門知識、趣味を持った若者に「任せる」ことで、アイデアの化学反応を誘発させアート性を生み出す。つまり、〝敢えて「任せる」〟ことでお寺の活性化を試みました。
 これら3つの柱を掲げ、11年間活動を継続してきた結果、友人たちがそのまた友人たちを誘い、結果58名もの個性豊かな若者が集まり、お寺を拠点としてみんなで「楽しみながら」この活動を行っています。
 

◇継続した結果、お寺で見えてきたもの

 この一連の活動を継続して行ってきた結果、これまでお寺で見られなかった現象が次々と起こり始めました。
 一つには、お子さんやお孫さんである若者たちが、両親やおじいちゃん、おばあちゃんの手を引いてお寺に来られるという、「逆転の現象」が見られるようになりました。
 あるご家族は、毎年親子3世代、4世代でこのイベントに来られます。そして何より、この「キャンドルナイトLIVE」のご縁から、お寺の諸行事や法座にも足を運ばれる方々があらわれ始めたのです。
 当初は「子ども・若者ご縁づくり」として行ってきた活動が、実際には子ども・若者だけに留まらない、お寺の「新たなご縁づくり」につながっていたのです。

キャンドルナイトLIVEスタッフ④.jpg「キャンドルナイトLIVE」に関わる58名のスタッフ
 

◇無理をしない程度に、自分ができる範囲で、継続した活動

 すべては、「無理をしない程度に、自分ができる範囲で、継続した活動」、これに尽きるのではと思っています。こういった活動に即効性はありません。一度行ったからといって、思うような結果は得られないかもしれません。しかし、「継続して」行うからこそ、徐々に認知され始め、定着していくのだと思っています。そのためには、「無理はしない」ということも私は大切にしています。あくまで自分ができる範囲で行い、それを「継続していく」、つまり「一過性のもので終わらない」ということがとても大切なことではないでしょうか?
 

◇最後に

 私はこの活動を、「ご縁づくりの種まき」だと思っています。芽が出るか出ないかはわかりません。しかし、種をまかなければ芽は出ないと思うのです。
 お寺は、ご法事や悲しみのご縁に出遇う場所だけではなく、仏法を聞いていく聞法の道場でありながら、「念仏ひとつ」という筋を通した上で、楽しいことや感動を分かち合う場所。つまり、「歓びも悲しみも、みんなで分かち合う場所」ということを、言葉だけではなく実践を通してこれまでご縁のなかった若い人たちへお伝えできたらと思っています。
 今、私にできることを精一杯行っていきたいと思います。


子ども・若者ご縁づくり推進委員会
若者ご縁づくり部会
安武義修


PDF:第20回  楽しむことを前提とした、仏様とのご縁づくり

この記事をシェアする

page top