宗報
第2期 思春期・若者支援コーディネーター養成研修会について
宗報(2018年11・12月合併号) シリーズ「子ども・若者ご縁づくり」第21回
第2期思春期・若者支援コーディネーター
養成研修会について
子ども・若者ご縁づくり推進委員会の思春期・若者支援部会では、特に思春期の子ども・若者の生きづらさを理解し、「お互いに不完全な者同士」として関わりを持つことのできる僧侶・寺族を、一人でも多く増やしていきたいと思っております。
このたび、第2期思春期・若者支援コーディネーター養成研修会を開催することなりしたので、研修会の方向性と内容についてお知らせさせていただきます。
まず、「なぜ思春期の若者と関わりを持つのか?」ということについてです。お寺では小学生までの子ども会は盛んに取り組まれておりますが、中高生の若者への取り組みは少ないのが現状です。しかしながら、子どもと大人の中間期にあたるこの時期は、あらゆる知識をスポンジのように吸収しつつ、「自分は何者か」、「人とどう違うのか」といったことに悩みながら、自己(アイデンティティ)を確立していく大変重要な時期にあたります。
この時期の子ども・若者と接する時に最も大切なことは、第一に、「彼や彼女たちが何に悩んでいるか」を知ることです。友だちのこと、彼氏や彼女のこと、性のことなどは一般的ですが、これ以外にも家庭環境や性自認(セクシュアリティー)のことなどで、人に打ち明けられない若者も少なくありません。こうした人たちに、僧侶あるいは寺族として、どんなアドバイスや関わりを持つことができるのか、また、浄土真宗のみ教えからどのようなメッセージを伝えることができるのかを、研修を通じて学び、考えていただけることと思います。
第1期の養成研修会は、2016(平成28)年度に、第1回から第3回まで、延べ7日間、約20講義で開催されました。それぞれの内容は、性(性教育、性暴力など)、セクシュアリティー、薬物依存、リストカット、児童虐待、不登校、自死などのテーマのもと専門の医師や支援組織の代表者などによる講義であり、思春期の若者を知るうえで他に類を見ない研修会でありました。今回の第2期は、延べ5日間となりますが、ほぼ同様の内容となる予定です。
研修会全体の監修は、第1期と同様に、学校性教育の第一人者、泌尿器科医の岩室紳也さんと薬物依存やリストカットなどの援助の第一人者である精神科医の松本俊彦さんにお願いしております。お二人ともに当事者である若者の側に立った援助者として大変評価の高い方です。したがって、本研修会では、「ダメ、ゼッタイ」という標語に象徴されるような、一般的な常識の押しつけや、「こうあるべき」という指導を若者に対して行う、というような方向性は持ちません。「自分も同じようなことで悩んでいた」あるいは「もし自分が同じ境遇であったならば」というまなざしを持ちながら、「お互いに不完全な人間」として、当事者である相手を可能な限り理解しようとする方向性です。
思春期・若者支援コーディネーターには、思春期の子ども・若者の生きづらさを知り、学んだうえで、継続的につきあいながら、必要に応じて専門家へとつなぐことのできる人となっていただきたいと思っております。私たちは、僧侶、寺族であるがゆえに、問題への解答を示さなければならないと思いがちですが、複雑な事情や感情を抱える生きづらさの問題は、決して私たち単独で解決できるものではありません。したがって、期待されるコーディネーター像としては、一つの分野で深い知識を持つ専門家ではなく、思春期の諸問題全般についての広範な知識を持ち、かつ各地の行政やNPO、同じく宗門内の思春期・若者支援コーディネーターとも協働することのできる人、を考えております。
子ども・若者ご縁づくり推進委員会
思春期・若者支援部会長
藤間幹夫
◇受講者の声
思春期・若者支援コーディネーター養成研修会を知ったきっかけは、インターネット(SNS)での友人の投稿でした。「本願寺派の新しい研修会の本気度がすごい」と、他宗派の人も含めて話題になっていました。以前から、思春期支援などに興味があったので参加を決めました。
各テーマについて私たちは、マスコミなどを通して理解したり、場合によってはすぐ近くで起こった問題として接したりしています。そのどちらも、ものごとの一側面にしかすぎなかったこと、問題の内側には複雑な事情が絡まり合っていることを、研修を通して知りました。
思い返してみると、私自身も思春期のころには生きづらさを抱えていた当事者として、このような問題を経験してきました。しかし、当時は頼りになる大人がまわりにいるという可能性は、まったく考えていませんでした。この研修を縁として、私もその環境を作る手伝いができればと思っています。
子ども・若者ご縁づくり推進委員会
思春期・若者支援部会
第1期思春期・若者支援コーディネーター養成研修会修了者
寺澤真琴