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宗報

「スクール・ナーランダ」のこれから

宗報(2019年1月号) シリーズ「子ども・若者ご縁づくり」第22回
 

「スクール・ナーランダ」のこれから

◇はじめに

 「仏教や宗教を身近なものに感じた、生活に根付いている仏教の可能性を感じた。」
 「参加して、新しいことや今まで気付かなかったけれど、確かに存在するものについて学べて、とても視野が広がった。美術・天文など、一見関係なさそうな分野がつながっていて、知的好奇心を刺激された。仏教の考え方にも興味を持った。」
 仏教やお寺とのご縁があまりなかった若者世代と、新たな関係づくりを目的として企画された現代版寺子屋「スクール・ナーランダ」。冒頭は、実際にその「スクール・ナーランダ」に参加した若者たちの声です。こちらから動員をかけて無理やり集まってもらうのではなく、お寺という場所に、彼らが自らのアンテナで情報をキャッチして、参加費や交通費、場合によっては宿泊費をかけてでも、自らの意志で参加し、浄土真宗のみ教えそのものに正面から出遇っていく。そんな魅力的な「スクール・ナーランダ」が実施されて、今年で3年目を迎えました。初年度の京都と高岡、昨年度の東京を経て、今年度は、再び京都で2019年2月9日・10日に開催される予定です。
 今回は、京都開催の内容を少しご紹介させていただくとともに、今後どのような展開を目指しているのか、その展望を考えてみたいと思います。
 

◇将来のビジョン

 「スクール・ナーランダ」は、仏法を伝えることに重点をおいた学びの場で、いくつかの特徴があります。①浄土真宗に加え、科学や芸術、哲学、社会活動など、多様な分野の専門家を講師に招く。②一方通行ではなく、参加者同士のディスカッションや、講師への質問など双方向のやり取りを含め、参加者が主体的に関われる場とする。③座学だけでなく、見学やワークショップなど体験型のプログラムを取り入れる。④企画・運営に参加対象と同世代の若者たちに参画してもらう、などが挙げられます。
 将来的には、これらの特徴を生かしたプログラムが全国、さらには海外開教区も含めた各地で行われ、多くの若者とのご縁がつながっていくことを目指しています。すでに、似たような試みを行っている教区や組もあるでしょう。それを「スクール・ナーランダ」式に変えてほしいというのではなく、若者と浄土真宗との接点をつくる方法として、是非参考の1つにしていただければと思うのです。それぞれの教区や組によって、取り巻く環境や条件も違いますので、これらの特徴すべてを当てはめることは難しいかもしれません。必ずしも「スクール・ナーランダ」そのものを各地で行ってほしいというのではなく、このエッセンスを地域の状況に合わせてカスタマイズしていただき、若者と浄土真宗がつながる企画が次々と開催されることによって、ひとつのムーヴメントになることを願っています。

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◇ビジョンに向けての展開

 少し話が飛躍し過ぎたかもしれませんが、少しでもその将来像に近づくため、来年度から組織的に全国展開していくことを考えています。すべての教区・特別区を回るには、膨大な時間とお金がかかります。そこで、5つのブロックごとに開催していき、そのブロックに属する教区のマネージャーや担当者には、是非準備や当日に何らかの形で関わっていただきたいと思います。「百聞は一見に如かず」と言いますが、まさに実際に見て感じていただくことで「スクール・ナーランダ」をまずは知ってもらい、込められた願いやノウハウ、またそこに生まれる情熱を、それぞれの教区に持ち帰っていただきたいのです。従って「子ども・若者ご縁づくり推進委員会」といたしましては、来年度から順番に各ブロックを回り、担当教区との共催という形で開催していきたいと考えています。同時に、全教区に「スクール・ナーランダ」のノウハウを詰め込んだマニュアルを配布し、それぞれの教区や組での、その地域の特色を生かした若者と浄土真宗との関係づくりを後押ししていきます。
 

◇チーム・ナーランダの可能性

 「スクール・ナーランダ」の4つの特徴の1つに、企画・運営に参加対象と同世代の若者たちに参画してもらうということを挙げました。その参画してもらうグル―プ名が「チーム・ナーランダ」です。このメンバーには、企画段階の会議から当日の運営まで関わってもらっています。その意図としては、今の若者がどのようなことに興味を持っているのかなど同世代だからこそわかるものがありますし、そういう参加者と近い目線での貴重な意見を反映させていくことによって、より若者にとって魅力的なコンテンツとしていくことになります。現在は、フリーペーパーを制作している大学生やこれまで開催した「スクール・ナーランダ」に参加し仏教に興味を持った若者など全国各地の活動意欲の高い人たちが登録しています。

東京①.jpg また参加者自身が、次にスタッフとして関わることのできる場を提供することにもなります。少しずつではありますが、ご縁をつくり、つなげ、そして深めていくことのできる仕掛けになっています。事実、高岡教区においては、地元の「チーム・ナーランダ」のメンバーの活動が活発で、昨年11月に富山県の若手僧侶や地域住民、高岡市教育委員会などが企画して開催された「ふるこはんフェス」(高岡教区勝興寺)では、教区の寺族青年会とともに実行委員会に入ったりと、教区とも関わり続けているという嬉しい報告もいただいております。また私の所属する東京教区でも、仏青主催のワークショップに参加し、さらに来年度から開催していく予定の企画を一緒に考えたいと手を挙げてくれているメンバーもいます。驚いたことに、静岡の私の自坊まで個人的に訪ねてきてくれたメンバーまでおり、教区とのつながりとともに、個人と個人でもつながり続けています。
 「チーム・ナーランダ」の存在は、「スクール・ナーランダ」の成果の1つであり、宗門での「ご縁づくり」や地域での活動に大きな可能性をもたらし、今後の様々な事業を行っていくうえでなくてはならないグループとなることを期待しています。また、「スクール・ナーランダ」を全国へ展開していくと同時に各開催地にてメンバーも募集していきます。
 

◇テーマは多様性

 さて、この度2月に京都で開催される「スクール・ナーランダ」ですが、全体を通したテーマとして「多様性」を掲げています。
 社会や共同体をつくることで25万年を生き抜いてきた人類ですが、孤独に耐えられない遺伝子を持つ私たちには他者が必要です。かといって、まわりに合わせるために我慢ばかりするのは辛いものです。テクノロジーの発達やインターネットの出現によって、ますますそのバランスが難しくなっているこの時代に、多様な価値観や個人のあり方が共存してゆくにはどうしたらよいのか。ファッションやダンスの世界で表現するクリエーター、進化論から人類を見つめる科学者、多くの人が共感する文章をコミュニケーション手段とするライター、そして2、500年間人々を支え続けてきた仏教の専門家である僧侶を講師としてお招きし、学び、ともに考えます。また、お念珠づくりやお香づくりの体験、伝統的な精進料理をいただくランチ、さらには本願寺書院の拝観も予定しております。
 この度の「スクール・ナーランダ」を通して、参加者には是非、自分の経験や知識に基づく視点だけではなく、様々なものの見方があるということ、そしてすべてがありのままに認められていく大きなはたらきに出遇ってほしいと思います。

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◇おわりに

 「スクール・ナーランダ」という場で、若者たちが真剣なまなざしで法話を聞き、仏法の視点を交えながら熱く語り合っている姿を目の当たりにしたことは、私にとって大きな感動でした。若者は総じて仏法が嫌いだとか、興味がないのではなく、今までご縁がなかっただけだということを実感した瞬間でもありました。だからこそ、「ご縁づくり」の大切さを、今あらためて感じています。志を同じくする多くの仲間とともに、私たち自身も楽しみながら、引き続き取り組んでまいります。


子ども・若者ご縁づくり推進委員会
若者ご縁づくり部会長
南莊摂


PDF:第22回  「スクール・ナーランダ」のこれから

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