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レポート

「生と性と死」古川潤哉さん|第3期 思春期・若者支援コーディネーター養成研修会

「思春期・若者支援コーディネーター養成研修会」は僧侶・寺族を対象として、思春期・若者の生きづらさについて理解を深める研修です。

今回の講師は、僧侶として公立学校で性教育の授業を実施する、佐賀県伊万里市・浄誓寺の古川 潤哉(ふるかわ じゅんや)さんです。古川さんは日本思春期学会の理事や医療法人の倫理委員など様々な領域でご活躍です。(講義実施日:2020年10月7日)

本記事ではスタッフの霍野 (つるの) が、受講して印象深かった気づきや学びをレポートします。


性教育を公立学校で実施


宗教者が公立学校で袈裟衣を着て授業を実施するのは全国的にも非常に珍しいケースです。ましてや、僧侶が性教育を行うなんて聞いたことがありません。

古川さんは、ホスピスやエイズの市民活動に関わるなかで、学校関係者側から「性といのち」をテーマにした授業のオファーがあり、教育現場に足を踏み入れることとなりました。

経緯.png

(講義のスライドより)


性教育というと「教えるから興味関心をもたせてしまう」「寝た子を起こすな」とネガティブな意見もあるように思います。しかし、教育のなかで正確な知識を教えることによって「望まない妊娠」や「性被害の被害者・加害者」などの問題が緩和されることが報告されています。


"今の子どもたちはスマートフォンやタブレットを使いこなし、簡単にインターネットで情報を得ることができます。そのなかには正しくない情報、偏った内容も含まれています。正しい知識や情報を教える必要性が以前にも増して高まっています"


日本では小学校4年生頃から月経のことなど男女の身体について教え始めますが、これはWHOや欧州の指針からすると、かなり遅いスタートになるそうです。性差にまつわる身体のことを「恥ずかしい」と感じる年代から教え始めると、性教育は恥ずかしいもの、真剣に学ぶのはおかしいというイメージがついてしまうのも当然のことかもしれません。WHOや欧州では性教育は3歳から始めることが推奨されています。


いのちは誰のものなのか...


古川さんは、学生にインタビューをしながら進行するインタラクティブ(双方向、対話的)な場づくりを大切にされています。性にまつわる医学的な内容も抑えながら、授業の中心は「いのち」や「存在」の話です。

重要なキーワードは「いのちを大切に」について。

いのちの授業.png

(公立中学校での講義風景)


"「いのちを大切にしましょう」は、よく言われるフレーズですが具体的に考えてみると哲学的な難しい提言です。

そもそも誰のいのちを指しているのか。学生に質問すると、最初は「自分」「家族」「友達」と自分と近しい人たちの答えが返ってきます。盛り上がってくると「県民」「国民」「世界人類」と続き、いのちは人間だけじゃなく動植物だってあるはずだと、いのちの枠組みが拡がっていきます"


次に、古川さんは「いのちはどこからどこまでなんだろう」と質問します。そうすると「生まれて死ぬまで」と返答があります。


その声を聞きながら、古川さんはさらに問いを投げかけます。


"卵子と精子が受精することによって、私たちの生命がスタートするわけだけど、このときはいのちに入らないのかな?"


考え出す学生に向かってさらに続けます。


"精子はその都度その都度つくられますが、卵子は途中でつくることはできません。女性は生まれたときに、自分がもっている卵子の数が決まっています。私たちの生命の大元である卵子は、母親が生まれたときに出来ているわけです。それじゃ、その母親の卵子はいつ出来たのかというと、母方の祖母のお腹のなかにいたときです。そんな風に卵子のつながりから考えると、想像できないほどの営みのなかで私の生命がようやく誕生するわけです"

いのちはどこから.png

(講義のスライドより)


さらに、死ぬことについても質量保存の法則の説明を通して、固定的に持っている思考の枠組みを解いていきます。


"私たちが認識できるのは「生まれて死ぬまで」かもしれないけれど、「それだけじゃないのかも」と学生に気づきや揺らぎを与えることを大切にしています"





【編集後記】

「僧侶が公立学校で性教育を教える!?一体何を話してるんだ?」と、私は少し怪しさも感じていました。そこで伝えられている内容は、生まれること・死ぬことを考える「いのちの授業」でした。授業内容の本旨がブレないこともさることながら、古川さんの人柄やユーモアが溢れる、楽しい授業なんだろうなと想像しました。いのちにまつわる固定概念を脱臼させる内容は、私たち大人が聞いても気づき溢れる実り多い時間でした。

次回の「思春期・若者支援コーディネーター養成研修会」は、今年の秋頃の開催予定です。詳細が決まりましたら、本ウェブサイトならびにSNSでお知らせいたしますので、ご関心のある方はSNSをフォローください。





【講師】古川 潤哉(ふるかわ じゅんや)

1976年生まれ、龍谷大学文学部真宗学科卒。佐賀県伊万里市・浄土真宗本願寺派 浄誓寺 僧侶。ホスピス、緩和ケアへの関わりからHIVやAIDSの支援、セクシュアリティ、望まない妊娠や中絶など若者の性の悩みに関わるようになり、「生と性と死」「思春期の生きづらさ」をテーマに中学、高校での性教育などに取り組む。日本思春期学会 理事、日本エイズ学会 会員、医療法人光仁会 西田病院 倫理委員。浄土真宗本願寺派 子ども・若者ご縁づくり推進委員。共著「中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド」(日本評論社)。




【執筆者】霍野 廣由(つるの こうゆう)

福岡県築上郡にある、浄土真宗本願寺派・覚円寺の副住職。大学在学時に、自死・自殺や終末医療、高齢者福祉の活動に携わる。大学院を修了し、認定NPO法人京都自死・自殺相談センターに就職、現在は事務局長を務める。相愛大学非常勤講師。浄土真宗本願寺派 子ども若者ご縁づくり推進室 委員。





【研修情報】

思春期・若者支援コーディネーター養成研修会
主催:浄土真宗本願寺派 子ども・若者ご縁づくり推進室「思春期・若者支援部会」
お問い合わせ:goen@hongwanji.or.jp
SNS情報:子ども・若者ご縁づくりFacebook

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