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レポート

「性被害と共に生きる~あの日、あれから、そして今~」あみちえさん|第3期 思春期・若者支援コーディネーター養成研修会

「思春期・若者支援コーディネーター養成研修会」は僧侶・寺族を対象として、思春期・若者の生きづらさについて理解を深める研修です。

今回の講師は、NPO法人JASH(日本性の健康協会)代表であり、性被害や摂食障害のピアサポートをおこなっているメゾン・ド・アミティエ主催のあみちえさんです。あそびアートディレクター、地元千葉のPTA会長、主任児童員などたくさんの肩書をお持ちですが、普段は保育士として働いておられます。欽ちゃんの仮装大賞優勝という経歴もお持ちの、楽しくエネルギッシュな方です。(講義実施日:2021年3月31日)


本記事ではスタッフの藤間 (ふじま) が、受講して印象深かった気づきや学びをレポートします。


「性暴力は魂の殺人」。でも、しあわせになっていい。なれる。


性被害の当事者であるあみちえさんは、このようにきっぱりと断言されます。高校生の時の出来事、その後の数か月間の記憶が無いこと、親に知られた時に言われた言葉、依存やフラッシュバック、自己否定や自殺願望に苦しみ、12年後にようやく支援者とつながり、今に至ることを、あみちえさんは包み隠さずに語って下さいます。

現在では、仕事や家庭、出産や子育て、講演活動など多忙な日々を送っておられますが、それでもある時まで、しあわせな自分のことを性被害にあったもう一人の自分が冷ややかに見ているような感覚があったそうです。しかし、ある時、ふと、「しあわせになってもいいはずだ」と、思われたそうです。


"何をもって乗り越えたと捉えるか。忘れることは不可能で、忘れようとしているうちは難しいです。被害経験と共に生きていくこと、根気強く受け止める続けることがなされる環境が一番大事です。本当の意味での解決は、犯人逮捕でも被害を乗り越えるでもなく、被害後の人生をその人らしく生きられること、どんな自分も愛せることだと思います。このことは性被害に限らないことだと思いますよ。"


整いつつある支援。でも誰にも相談しない人が6割以上という事実。


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(講義のスライドより)


法律の改正や支援体制の整備など、社会の性被害への理解と問題意識も広がりつつあります。また近年#MeToo運動のように性暴力を許さないという社会的機運も高まっています。それでも警察に相談しなかった人が84%、警察に相談するまでに平均約10年、65%の人が誰にも相談しない状況は、ここ10年間かわっていないそうです。

被害に遭った時どうしたらいいのか、体のケア、心のケア、法的支援や生活支援、依存症やフラッシュバックなどこれから自分にはどのようなことが起こりえるのか、などの情報やサポートが当事者にはどうしても必要です。被害者をそうした支援とつなげていくためにも、ある程度の知識を持った第三者の介入が必要なのです。


"身近な人のサポートは思いが強いだけにかえって難しいのですよ。私は親を悲しませたくないという思いから被害のことを言わなかった。両親は2年後に知った時、ショックで私のことを優しく受けとめることができなかった。私は受けとめてくれなかったことへの怒りで「自分はあんな母親にはならない」と思って生きてきたけど、後に母が一人でずっと悩んでいたことをおばから聞き、母も深く傷ついていたことにその時初めて気づいたのです。自分が母親になってみると、もし娘がこんな目にあっていながら私に言わなかったら母親としてどんな思いがするだろうと。それが子どもの私にはわからなかったのです。"


「自分は守られるべき存在」。権利と受援力。


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(講義のスライドより)


被害に遭わないための環境整備も大切ですが、被害に遭ったとしてもケアされ、しあわせに生きることができるための対策こそが重要であることを、あみちえさんは強調されます。また、自分自身が守られるべき存在であるという認識や、ずっと待っているのではなく、支援を見つけにいく力も必要となります。そのためには大人や社会がオープンでフレンドリーであることが理想です。


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PTA会長は祝辞やあいさつをする機会が多いのですが、「大人はみんなを守りたいと思ってるんだよ!」「何かあったら私に言ってくるんだよ!」と、繰り返し声を大にして伝えているんですよ。「困ったときは?」「あみちえ!」のコールです。"




【編集後記】

それでも時々湧いてくる負の感情に対しては、地域のバレーボールで球に怒りを込めたり、思い切り床に飛び込んでレシーブするなどして対処されるんだそうです。レジリエンスという言葉があり、逆境やトラブル、自己に不利な状況やストレスにおいて自身を対応、適合させる能力と定義され、回復力、弾力性、しなやかさ、と訳されますが、あみちえさんは強烈なまでに「レジリエンス」を体現している方のように感じました。

次回の「思春期・若者支援コーディネーター養成研修会」は、2022年10月からスタートします。オンライン講座を中心にしながら、本願寺にて2回のスクーリングを実施します。現在申込み受付中ですので、ご関心のある方は下記より詳細をご覧ください。一緒に学び合える仲間と出会えることを楽しみにしています。

第4期 思春期・若者支援コーディネーター養成研修会 募集





【講師】あみちえ

1982年生まれ 船橋市出身
自身の性被害、摂食障害、いじめ経験から「いのち、こころ、からだの大切にすること」を涙あり笑いあり前向きに伝える講演と、同じ経験を持つ仲間同士の支えあい、情報交換の場ピアサポートを推進する「メゾン・ド・アミティエ」を主宰し様々な人との交流を続ける。
保育士として子供たちの心に寄り添いながら、性暴力、虐待、DV、社会的養護の問題や、子育てサポート、PTA活動に取り組む。
2018年からは、こころ×ARTで日常を豊かにする「あそびアートディレクター」として、子供から大人まで様々な人が共にアートするイベントも開催している。




【執筆者】藤間 幹夫(ふじま みきお)

広島県福山市にある、浄土真宗本願寺派・光明寺の住職。ボーイスカウト福山第2団団委員長。大学卒業後、5年間の企業勤務を経て入寺。中央仏教学院、住職課程で学ぶ。浄土真宗本願寺派 子ども若者ご縁づくり推進室 マネージャー。



【研修情報】

思春期・若者支援コーディネーター養成研修会
主催:浄土真宗本願寺派 子ども・若者ご縁づくり推進室「思春期・若者支援部会」
お問い合わせ:goen@hongwanji.or.jp
SNS情報:子ども・若者ご縁づくりFacebook

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