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レポート

現代版寺子屋 スクール・ナーランダ vol.6 山口

日  時: 2022年2月12日(土)・2月13日(日) 100017:15

会  場: 本願寺山口別院(山口県山口市小郡花園町37号)

開催方法: オンライン開催(YouTube/Zoomミーティング)

      ①YouTube〔内容:開会式・講義・ワークショップ・鼎談・閉会式〕

      ②Zoomミーティング〔内容:ディスカッション〕

テ ー マ:  不易と流行
       変わりゆく世界で変わらないために変わる私たち

地球環境・農業・経済・ファッション・仏教、世界を俯瞰する大きな物語から身近な小さな物語まで、今の暮らしと未来をつなぐ、変わらないための変わり方を共に考えました。

講  師: 中村明珍先生 (農家・僧侶・音楽家)

      占部まり先生 (内科医)

      赤井智顕先生 (浄土真宗本願寺派僧侶)

      吉田尚弘先生 (生物地球化学者)

      米田年範先生 (ファッションブランド・ディレクター)

      福間義朝先生 (浄土真宗本願寺派僧侶)



― 講義レポート ―

<1日目>

■「自分のペースで息をする」 中村明珍先生

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中村先生は、ご自身の農家・僧侶・音楽家としての活動やこれまでの人生経験についてお話くださいました。

現在は山口県の周防大島に住み、農業に携わっておられます。

収穫物のどれを見ても育成にはそれぞれ個性があり、物事は思う通り且つまっすぐにはいかないことを学び、「自分のペースで息をする」ことを大切にされていると仰いました。

そして「自分は何をしたいのか」を問う原点回帰こそが、今回のテーマに繋がる「不易と流行」なのではないかと問いかけられました。



■「人を大切にすることで生まれる豊かさ
」 占部まり先生

占部先生は、経済(経世済民)とは、幸福を実現するためにお金を交えて考えた学問であるという定義のもと、父親である経済学者の宇沢弘文教授の「社会的共通資本」の観点から、豊かな社会構築や本当の豊かさには何が必要なのかを問われました。

「社会的共通資本」とは、数理経済学に基づく豊かさではなく、「自然環境」「制度資本」「社会的インフラストラクチャー」を基盤とした「人を大切にする」ことで生まれる豊かさを実現する考え方だそうです。

また「人を大切にする」という点では、ご自身が携われている「医療」の立場から人と人との関わりが治療に大きく影響を与えることを紹介してくださいました。

そして、人間の根源には「伝えたい」というものがあり、それが何なのかを尋ねることが「不易と流行」に繋がるのではないかとお話になりました。

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■「仏の心にふれる
」 赤井智顕先生

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赤井先生は、「仏教のはなし」と題して、「仏教を学ぶということ」「仏とは」「浄土真宗について」の三点に絞ってお話くださいました。

そのなかで、「仏」が説く教えとして、因縁生起(すべてのものが互いに関わりあい、生かされあって成立している)、無分別智(あらゆるものを平等にみつめていくまなざし)、慈悲(他者のしあわせを心から願い他者の痛みを共感する心)を紹介してくださいました。

どの教えも自分という存在を越える大きなものであり、このような仏の心にふれることによって、はじめて我欲に満ちた自分の存在を確認でき、そんな自分を変えていくことが可能になると仰いました。

そして、浄土真宗では「学仏大悲心」(阿弥陀仏の大悲の心を学ぶ)という言葉が大切にされ、阿弥陀仏の心を根本主尊とした価値観や行動基準こそが「不易」であり、私たちの姿が「流行」であると仰いました。

しかし、「流行」には「私を変える力」もあるということもお話くださいました。



<2日目>

■「私たちは地球とつながっている」 吉田尚弘先生

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吉田先生は、地球環境を改善していく可能性についてお話くださいました。

そのなかで、世界各国が推進しているSDGsについて、人類活動は地球システムに反映されており、私たちは地球とつながっていることをお話されました。

そして、世界のSDGsの現況をみると、実態はどの項目も成果があがっていないことが指摘され、SDGsに掲げられる17の目標はそれぞれ独立して解決することは不可能であり、「人類の幸福」というものを中心にしながら包括的に取り組むべきだと強調されました。

最後に吉田先生は、「進歩」についてもお話くださいました。「進歩」とは、伝統を革新し、伝統が生まれ、またそれを革新していくことだそうです。

科学の偉人方を振り返りながら、重箱の隅を突き詰めていくことで、新しい地平が生まれるとも仰いました。



■「自分が大事にしたいと思うこと
」 米田年範先生

米田先生は、ご自身の活動を紹介しながら、これまで大切にされてきた姿勢についてお話くださいました。

自社SREUブランドでは、素材は、古着業者が購入しない売れ残りや企業などで廃棄処分になるようなもの、また、市場にあふれている服を使用しつつも、決してリメイクした服を安っぽく扱わないようにしているそうです。

また、リメイクという特徴から、昨今SDGs関連で注目を受けることが多いそうですが、最初からSDGsを意識していたことではなかったと仰いました。

しかし、注目を受けるならば、できる範囲でSDGsに対応しようとしているのが、SREUブランドの現在だそうです。

最後に、ご自身の経験を振り返りながら、生き方としてあまり周りの目を気にする必要はなく、自分が大事にしたいと思うことに進んでいっても大丈夫だというメッセージをいただきました。

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■「私たちは生かされている
」 福間義朝先生

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福間先生は、午前中に授業をされた吉田先生と米田先生のお話の中で仏法に通ずる点を紹介されながら、原点である「私たちは生かされている」ということを忘れてはならないとお伝えくださいました。

環境破壊や大量生産・消費の根底にある問題として「地位」「財」「家」「家族」「健康」に対する人間の執着があると指摘され、これらがすべての苦しみの原因であり、実際にこれらを捨て苦しみから解放されたのがお釈迦様であったことを紹介されました。

そして、この苦しみの原因にできるだけ早く気づくことを勧められました。その理由は、誰しもがいつかは執着するものをすべて失うからです。

最後に、人生は思い通りにならないこともあり、時として落ち込んだり、泣いたり、死を考えてしまうほど苦しいこともあるかもしれませんが、それでも阿弥陀仏という仏は「私」を見捨てず、常にそばにいてくださるということを伝えてくださいました。

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