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宗報

「各教化団体との連携」〜次世代へのご法義伝承〜

宗報(2018年6月号) シリーズ「子ども・若者ご縁づくり」第17回

 

「各教化団体との連携」
~次世代へのご法義伝承~

◇はじめに

 宗報5月号「子ども・若者ご縁づくりシリーズ第16回」に、今年度から重点的かつ継続的に推進したい5項目の中の1つに、「各教化団体との連携」を掲げました。今回は、副題を「次世代へのご法義伝承」として、ご説明を加えます。
 「仏法を依りどころとして生きる」ということは、一生涯を通して、どの年代にあっても、仏法との「ご縁」を恵まれることにあると思います。「生涯が聞法」にあり、さらには「生涯が伝道」にあることを、世代別に教化の対象を設定している各教化団体との連携という視点から考えたいと思います。

 「子ども・若者ご縁づくり推進室」(以下「推進室」)では、「念仏を次の世代へ」との願いを持って、各教化団体との連携をめざし、これまで幾度か「教化団体代表者会議」を主催することや、教化団体が開催する「理事会」「評議員会」または「委員会」において、主旨説明・協議を進めてまいりました。それぞれの教化団体における活動計画書の中に「子ども・若者ご縁づくり」をテーマとする重点目標が設定され、取り組みを進めていただいています。
 教化団体が設置されていない寺院におかれましても、門信徒のみなさまとともに、恵まれた仏法との「ご縁」を「つなぎ」「深める」ために、できること、また、願いを同じくする方々と力を合わせてできること、特に幼少・青年に向けた「伝承」について考えていただく一助になれば幸いです。
 

◇「次世代へのご法義伝承」について

 専如ご門主は、『伝灯奉告法要についての消息』に、「阿弥陀如来のお慈悲を聞信させていただき、その有り難さ尊さを一人でも多くの方に伝えることが大切です」とお示しになられました。
 また、伝灯奉告法要ご親教『念仏者の生き方』には、「国の内外、あらゆる人びとに阿弥陀如来の智慧と慈悲を正しく、わかりやすく伝え、そのお心にかなうよう私たち一人ひとりが行動することにより、自他ともに心豊かに生きていくことのできる社会の実現に努めたいと思います」とお示しになられました。

 『蓮如上人御一代記聞書』に、「仏法は、若いうちに心がけて聞きなさい」(「蓮如上人御一代記聞書」現代語版48頁)と示され、「若いうち」に仏法と「ご縁」を恵まれることを勧められます。また、心がけなければならないこととして、「自分が信心を得てもいないのに、人に信心を得なさいと勧めるのは、自分は何もものを持たないでいて、人にものを与えようとするようなものである。これでは人が承知するはずがない」(「蓮如上人御一代記聞書」現代語版66頁)とのお示しがあり、自信教人信が肝要であることを教えていただいています。
 1961(昭和36)年4月12日、第23代勝如ご門主より、『幼少年教化にたずさわる人々への消息』を賜りました。その中に、「如来の本願を信じ お慈悲を喜ぶ者は たれも皆み教えのますます栄えゆくことを念願するのでありますがみ教えは ただ念願するのみではひろまりません お慈悲を喜ぶ喜びを 一人でも多くの人に伝えようとする積極的な実践があってはじめて ご法義は人から人へ伝わってゆきます ことに 幼少年への働きかけは 一生涯を通じて変わらない深い感化を与えるものであります...... み教えの将来 宗門の前途は 実に幼少年教化の成果にかかっている」とお示しいただきました。
 そして、同じ年の4月16日発布されました、『親鸞聖人700回大遠忌法要ご満座の消息』が起点となり、「門信徒会運動」が始まります。
 

◇「生涯聞法体系」について

 「門信徒会運動」が始まった1962(昭和37)年度に、「あなたの寺を強くせよ」というスローガンが登場します。その後、スローガンは運動内容やその時々の状況に応じて策定されます。1981(昭和56)年度より、「念仏の声を世界に子や孫に」となります。そして、1986(昭和61)年度に、「門信徒会運動」と「同朋運動」が一本化され「基幹運動」となります。
 時を重ねるように、1977(昭和52)年より検討が始まり、1983(昭和58)年に、「生涯聞法体系」が発表されました。当時の説明によりますと、「生涯聞法とは、私たちが阿弥陀如来のみ法に遇わせていただく機縁を、一人ひとりの人生の上で考え、これまで宗門が行ってまいりました組織活動・研修、そしてそのためのテキストなどを、心身の発育段階に応じて、関連づけるものです」とあります。
 「仏教婦人会総連盟」は少し早い時期となっていますが、前述の期間に教化団体の規約施行日が集中しています。
 各教化団体の「規約施行日」は次の通りです。

仏教婦人会総連盟 1947(昭和22)年11月12日施行
仏教青年連盟 1966(昭和41)年4月1日施行
保育連盟 1968(昭和43)年4月1日施行
少年連盟 1980(昭和55)年4月1日施行
スカウト指導者会 1989(平成元)年4月1日施行
仏教壮年会連盟 2008(平成20)年4月1日施行

 「仏教壮年会連盟」はその前身として、1979(昭和54)年3月31日、「仏教壮年の結集に関する宗則」が発布され、「全国仏教壮年会議」が設置されています。
その翌年、「少年連盟」の規約施行日を迎えますが、1980(昭和55)年4月1日は、第24代即如ご門主より『教書』が示された日と同日です。
 その『教書』の中に、「次代においてその中心となる宗教的情操豊かな青少年の育成も、私たちの責務であることは言うまでもありません。そこに宗門の本当の発展が実現されるでありましょう」と、お示しになられました。そして前述の通り、1981(昭和56)年度より宗門の運動のスローガンが「念仏の声を世界に子や孫に」と定められました。
 それぞれの教化団体には、規約施行日よりもさらに年月をさかのぼり、活動の始まりがあり、歴史があります。整えられた「規約」をもって単位会を設立することは、聞法の環境を整えることになります。寺院に、世代別に教化の対象を設定している教化団体があり、その教化団体間につながりがあれば、どの年代にあっても「居場所」があるということになります。
 しかし、「生涯が聞法である」という認識は、教化団体が設立されていなくても、仏法の伝承に寄与する計画であったと言えます。大切なことは、一人ひとりの人生の上で考えられる「つながり」にあると言えます。
 仏法との「ご縁」の始まりを、幼きころから恵まれ、若者へ大人へと成長する段階においても、「つながり」があり「深まり」があることを願っています。
 そして、そのことに関われるのは、「ご縁」をいただいた方々がなせることなのではないでしょうか。
 

◇中高生へのつながり

 ところが、子どもの時に恵まれた「ご縁」を、中高生への年代へとつなぐのが難しいという報告が度々あります。そこで、子どもが思春期を経て若者へと成長する時期の状況を、多様な角度から専門的に研究されている有識者をお招きし、学ぶことを始めました。そして、全国からも、この時期(思春期から若者)に関心のある方々に参集いただき、思春期にある生きづらさを学び、どのような関わりができるかを考えることのできる人材を養成する「思春期・若者支援コーディネーター養成研修会」を開催いたしました。学びの場をもって初めてわかる事柄が多く、引き続いて第2期の開催を考えています。

 さらに、お寺との「ご縁」が薄い方とコミュニケーションを試みる企画も進めています。「スクール・ナーランダ」(注1)と称し、参加者に「今と未来を生きる智慧」について、対話を重視した学びの場を始動いたしました。
 これらの取り組みを通して、子どもの時に恵まれた「ご縁」を、若者世代へとつなぐ架け橋になることを願い、各教化団体の連携、対象者(年代)に合わせた聞法の機会の継続を、重点的に推進したい項目に掲げたことです。
 

◇おわりに(まずは周囲の方々へ)

 蓮如上人は、「一宗の繁昌というのは、人が多く集まり、勢いが盛んなことではない。たとえ一人であっても、まことの信心を得ることが、一宗の繁昌なのである」(「蓮如上人御一代記聞書」現代語版82頁)とお示しになられました。
 「伝承」は伝える人があり、承る人があって成り立ちます。まずは、周囲の方々へ仏法に遇えた喜びを「わかりやすく伝える」ことが大切だと思います。
 「少子高齢化」「向都離村」が深刻な問題となり、家庭や地域の中で「子や孫へ念仏の声を伝承する機会」が保ちにくい時代となりました。宗祖が「仏法ひろまれ」と願われたおこころを、大切にいただき、私にできるご法義の伝承をたゆまず続け、新たに仏法との「ご縁」を恵まれた、子どもたち、若者たち、その「ご縁」をつないでくださった方々とともに、親鸞聖人御誕生850年慶讃法要、立教開宗800年慶讃法要をお迎えすることができればと願っています。


子ども・若者ご縁づくり推進室 部長
寺院活動支援部〈組織教化担当〉 部長
榮 俊英


(注1)「スクール・ナーランダ」。5世紀ころ北インドにありました、仏教だけでなく、医学、天文学、数学などを研究する総合大学「ナーランダー僧院」が名前の由来です。「蓮のある場所」を意味する「ナーランダー」。蓮は智慧の象徴です。「スクール・ナーランダ」は、仏教をはじめ人類が積み重ねてきた多様な叡智に出遇い、対話を重視した学びの場所として進めています。


PDF:第17回  「各教化団体との連携」〜次世代へのご法義伝承〜

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